もはや日記とかそういう次元ではない

そう、それは日記という既存の枠組みに一切捕われることのない、余りにも宇宙的でユニバースな、それでいてユニバーサルでユニセックスでリバーシブルな、日々の出来事を綴る、例のあれ。日記。

ドードーが、ぱったり出なくなった

始めるやいなやドードーばかり出て、ドードーがウザかった。ドードーしか出ない。携帯がブルルと鳴っても、どうせドードーなんだろうと思うと憂鬱で仕方がない。確認すると、結局ドードーだ。

 

ひたすらドードーを集めて、我はドードーマスターなり、なんてオチャらけてみたけど、それも虚しかった。本当は皆みたいにストライクが欲しいし、カビゴンを捕まえに行きたかった。それでも近所にはドードーしか出ないから、スルーするわけにもいかない。出てくるドードーを捕まえ続けた。ドードーが嫌だった

 

そんなドードーが最近、ぱったり出なくなった。かわりにコダック、オニスズメ、ヒトデマン。ゼニガメやカイロスも出る。家の近所は、色々なポケモンでにぎわった。外を出歩くのが楽しくなった。ミニリュウの影が見えて興奮した。ドードーに苦しんだ日々は過去のことになった。

 

 

しばらく色んなポケモンを捕まえて楽しんだ後、突然、何もかもが、どうでも良くなってしまった。色んなポケモンを捕まえて自慢するたび、すでに周りの友達がそれを持っている、そんなことを繰り返し、どこか意気消沈してしまった。ウツドンだって、どうせみんな持ってるんだろう。カブトプスを持ってるやつもいる。いつかサンダーが出たって、最初に捕まえるのはきっと自分じゃない。

自分は、ポケモン自体が欲しかったわけじゃない。周りの友達に無い「何か」が欲しかっただけなのだ

 

 

ドードーは、俺が他のポケモンに浮気したことに腹を立て、めっきり姿を現さなくなってしまった。ドードーはどこに行ってしまったんだろう。ドードーばかり出て、またドードーかよと落胆した日々が、いつのまにか恋しくなっていた。手持ちのポケモンはやたら種類が増えたけど、それはもう、どうでも良い。ラッタやビリリダマはいらない。モンジャラやアーボックもいらない。

 

 

携帯がブルルと鳴ると、いまでも期待に胸が高鳴る。茶色い鳥が、挑発するような甲高い声をまた聞かせてくれるかもしれない。原色で彩られたマップの上に主人公は立っている。桜の舞う場所で、いまではドードーだけを探している。

 

 

 

 

 

 

ー嘘ピョン